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「ブラックなんダー」 黒の恨み唄H 【デビュー編(1)】 |
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逮捕から5日後、ブラックなんダーの嫌疑は晴れ、釈放される。 「あそこまで黒ずくめだったから、また新しい学生グループかと思ったよ」 ・・・どう見ても『学生』には見えないブラックなんダーに、彼を逮捕した警官の一人は言った。 しかしそのおかげで、ブラックなんダーの名曲『黒の恨み唄』は、とある拘置所のなかでデビューを遂げたのであった。 その鮮烈なデビューは、拘置されていた学生ばかりか、看守の警察官、更には掃除のおばさんまで、幅広く人の心を打ったのだった。 『あのときの光景が終生忘れられない。』 あの日から数十年が経ち、既に牙も折れて人間的に丸くなってしまった今日でも、そう言って涙ぐむ、かつての『闘士』達も数多くいる。 ・・・「シンガー・ソングライター」 そう名乗ったブラックなんダーは、学生達にその“歌”をせがまれた。 その拘置所の一室は檻の様に鉄格子で仕切られ、一室には5名が入れられ、通路を中心にして左右に計10室となっていた。 しかし当時の拘置所は満員御礼、定員50人のところに100人近い数が押し込まれていた。 最初、ブラックなんダーが歌い始めたとき、彼は檻の中の一ついた。 だが、彼が歌い終わりアンコールの歓声が沸き上がると、それまでブラックなんダーの歌に聞き惚れていた看守は慌てて鍵を開けて、彼を通路の真ん中に立たせ歌わせたのだった。 それほど、ブラックなんダーの歌は人の心を惹き付けたのであり、また、そんな良き時代でもあった。 「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」 |
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