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ブラックなんダー

【ブラックなんダー】 「人生は修行だ!」の巻 (23)

妻、白妙の正体を知ってしまったその日、夜遅くなっても混乱したままのブラックなんダーは、知り合いの中で“最も怪奇現象に詳しそうな”男である、師匠のブラックマイスターを頼ることにした。
しかし、師匠の住処はもぬけの殻。

「もしあなたが私のことをしゃべったら、その瞬間、私は消えていなくなるのですから」
かつての約束通り、ブラックマイスターはその姿を消していたのだ。

とはいえブラックなんダーは、酒に酔って白妙にブラックマイスターの正体をバラしてしまっている事など覚えていないから、ただうろたえるばかりだ。
その時、ブラックなんダーの脳に直接、ブラックマイスターからのメッセージが鳴り響いた。

『愚か者めっ! あれほど私と修行を積んでおきながら、アルコールに目がまわり、私との約束を破るとはっ!』
『ああ、ブラックなんダー。 お前さんが験力(げんりき)を使えるのも今夜限りだっ!』
『そして、お前さんが約束を破った事を忘れないよう、来年の今月今夜、再来年の今月今夜、再来年の今月今夜、十年後の今月今夜、一生を通して私は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死でも私は忘れんよっ!』
『いいかブラックなんダー、毎年の今月今夜になったらば、私の涙で必ず月は曇らせてみせるっ!』

その時、ブラックなんダーは悟ったのだった。

昨夜、自分が何をしてしまったかを・・・。
ブラックマイスター師匠が、どれだけブラックなんダーの事を思っていたかということを・・・。
妻の白妙とは、試練の為に師匠が験力を使って寄こした物の怪であったことを・・・。
白妙との結婚こそが、師匠が彼に課した最後の試練であったことを・・・。
この試練をブラックなんダーが乗り越えたとき、師匠が秘技「隠れ身の法」を彼に伝授しようとしていたことを・・・。



翌朝、すべての験力とブラックマイスターに関する記憶を失ったブラックなんダーは、新宿の街角に立っていた。

例の「ブラック企業への就職希望者」のプラカードを持ちながら・・・。


(「人生は修行だ!」の巻 :完)




「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」


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