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【ブラックなんダー】 「人生は修行だ!」の巻 (7) |
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「私が、なぜ貴君の前で語り始めたかお分かりか?」 老紳士の質問に、ブラックなんダーは答えることができないまま、突っ立っていた。 老紳士は、自分からブラックなんダーに寄ってきて、突然大きな声でブラックなんダー(と周りの大衆)に向かって話し出したのだ。 意味など理解できないのは当然だ。何がなんだか、サッパリわからない。 老紳士の“気”に圧されっぱなしで、頭はちっとも回らない。 ブラックなんダーが答えに窮している前で、老紳士はふっと微笑んだ。 その瞬間、ブラックなんダーの緊張が解け、今度は急に、全身から同時に汗が噴き出した。 頃は年末、寒い街中であるというのに。 老紳士は微笑みながら、ブラックなんダーに、語りかけた。 「私が話す言葉は、私の言葉ではない。」 「私以外の“なにか”、そう“神”とでも言っておこうか、が貴君を見たとき、私に命じ、私の口をもって語らせたのだよ。」 「だが、それがなぜ貴君だったのか、なぜ今であったのかは、実は私も分からないのだよ」 老紳士は自分を、『ブラック・マイスター』であると名乗った。 決して宗教家や怪しい人物ではない、とブラックなんダーは根拠もなく勝手に確信した。 しかし、すごいカリスマ性である。 宗教家でなれば、凄い勢いで布教して信者を爆発的に増やすだろう。 政治家になれば、与党も野党もすべて糾合して、一大勢力を成し、大統領や国家元首の地位さえ得られることだろう。 ブラックなんダーが、この『ブラック・マイスター』に圧倒され、恭順しようと思った瞬間、心の中で黒い声が囁いた。 「就職なんかしなくても、この人から学べば、起業くらい簡単だろう・・・」 あっさりと打算に負けてしまう、そんなブラックなんダーであった。 「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」 |
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