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ブラックなんダー

「ブラックなんダー」 ブラックな小説 I

小説『黒熊』は、ある出版社の有名な編集者の目にとまり、小説雑誌の連載となることが決まった。
その編集者の名前を黒田という。

黒田はブラックなんダーを絶賛した。
初版の本の帯に「不世出の天才作家、満を持して今世に問う大作」と書いた。

有名な文芸評論家たちも書評を寄せた。
「自分が誤って射殺してしまった黒熊と、その後の精神的葛藤が見事に描かれており・・・・」
「心の豊かさと近代文明社会への隠れた批判精神が垣間見られる現代の名作」
とかなんとか。

中には「この大作はいまだ完結を見ない。おそらく、あと10巻以上と・・・・」などと書かれたりもした。
そしてついには、山岡so八の『徳川yeah康』のギネス記録を越えるのでは・・・・」とまで言われるようになった。

終わる時を失ってしまった小説ほど惨めなものはない。
小説家の常として締め切りに追われ、ブラックなんダーは寝る時間さえない。

彼は、この小説を早く締めくくってしまいたいのだが、そうはいかない。
なにせ、結末が思いつかないのだから・・・。

本人の意向とはズレたまま、すっかり時流に乗った大作家となってしまった、ブラックなんダーなのであった。



「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」

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